2023年に実施した三浦市のこどもふるさと便プロジェクトでは、美味しく食べられるにも関わらず見た目やサイズが不揃いのため商品としての活用が難しいこともある規格外野菜を、こども食堂やフードバンクなどの食支援活動を行う方々へ無償でお届けする取り組みを行いました。
本プロジェクトにおいてご協力いただいた三浦市農協共販部部長の石渡さんより、農家と市場の間に立つ農協さんの立場から、こどもふるさと便について感じたことや期待することなどを伺いました。
―――通常であれば市場に出回る機会が限られる「規格外の野菜」が、こども食堂やフードバンク団体など食支援を求める方々に活用されることについて、どのように思いますか?
(石渡さん)本プロジェクトで取り扱った野菜は大根と人参ですが、それらに限らず、野菜を作っているうえで商品にならない「規格外」というものは、どうしても発生してしまいます。販売する商品は、ある程度の規格に則り物流や管理の効率化を図って出荷しているため、規格外で廃棄せざるを得ない状況があるためです。私たちは、この規格外の野菜を捨てる以外の手段を持っていない中で、こどもふるさと便の提案を受けました。近年、野菜離れが進む中、普段あまり野菜を購入しない方に対して野菜を届けられるというのは非常にインパクトのある取り組みだと思っています。
この取り組みは、通常の業務をベースに、特別な作業が極力発生しないようオペレーションが構築されています。物流なども既存の仕組みをできる限り活用し、新たな作業はなるべく少なくし、取り組みに関わる農家さんを含めて余分な負担がかかりづらい仕組みになっています。今後、オペレーションがより洗練されていけば、展開エリアが一層広がっていくのではないかと思います。
―――こどもふるさと便が、今後全国各地へ広がっていくと、世の中にどのような変化があると思いますか?
(石渡さん)展開エリアが広がることで、例えば三浦市産の大根など、今まで触れることがなかった野菜の魅力を多くの人々に知ってもらえる機会につながると思います。また、これらの活動が継続されることで、野菜離れを防ぎ、野菜の大切さや美味しさを広めることができると考えています。
加えて、規格外の野菜を活用することで、食品ロスの削減にもつながります。これまで廃棄されていた野菜が有効に活用されることで、環境への負担も軽減されると思いますし、食支援を必要とする方々に新鮮な野菜を届けることができるため、地域社会全体の健康促進にも繋がる取り組みだと考えています。
―――農協さんの立場から、この取り組みに今後期待することはありますか?
(石渡さん)本プロジェクトでは、規格外野菜の「出し手」と「受け手」をうまくマッチングさせることが重要でした。今後、規格外野菜の供給が急に増えた場合や、受け手側(供給先)のニーズに迅速に対応できる仕組みが整えば、よりスムーズで無駄のない運営が可能になると期待しています。また、物流面でもより柔軟な対応ができれば、さらに多くの方に新鮮な野菜を届けられると思います。
―――こどもふるさと便で届けられた大根と人参を食べたこどもたちへ、一言メッセージをお願いします。
(石渡さん)私たちは、この三浦半島の温暖な気候に恵まれた環境で育てた「本当の旬の野菜」をお届けしました。そんな大根と人参を食べることで、季節の恵みを感じ、野菜本来のおいしさを味わっていただけていたらとても嬉しく思います。三浦の野菜にはたくさんの栄養が詰まっていて、みんなの体を元気にしてくれます。ぜひ、いろいろな食べ方で楽しんでください。