こどもふるさと便

全国こども食堂支援センター・むすびえ(前編) 理事長 三島理恵さん + プロジェクトリーダー 小山秀幸さん

全国こども食堂支援センター・むすびえ(前編) 理事長 三島理恵さん + プロジェクトリーダー 小山秀幸さん

こども食堂。実際に行ったことはなくても、その名前を耳にしたことがあるという方は多いのではないでしょうか。いまや全国1万ヵ所以上に広がっているこども食堂は、単に食事を提供するだけの場ではありません。子どもを中心にさまざまな世代・属性の人々が集まり交流する「居場所」でもあります。そして、孤独・孤立や貧困をはじめ、さまざまな社会課題の解消に寄与するものとして、ますます注目されています。

そんなこども食堂への支援を通じて、「誰も取りこぼさない社会づくり」に取り組んでいるのが、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえです。食事にとどまらないこども食堂のもつ価値やその現状について、同法人理事長の三島理恵さんとプロジェクトリーダーの小山秀幸さんにうかがいました。

こども食堂は、みんなの居場所

——2024年にその数が1万ヵ所に達し、中学校の数を上回るまでに広がったこども食堂ですが、どういうものなのか簡単に教えていただけますか。

三島 こども食堂は、子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂です。各地で自発的に運営され、食事提供だけでなく、多くは子どもを中心に幅広い世代の人たちが食を通じて交流する「みんなの居場所」となっています。また、地域のにぎわいづくりや高齢者の生きがいづくり、孤独孤立や貧困などの課題の改善にも寄与しています。

——こども食堂は各地で自発的に運営されているということですが、決まったフォーマットのようなものはあるのでしょうか?

三島 月1回開催のところから365日3食を提供しているところまで、数人を対象としているところから毎回数百人が集まるところまで、規模や頻度もさまざまです。また目的も、おなかをすかせた子どもへの食事提供から、孤食の解消、滋味豊かな食材による食育、地域交流の場づくりなど、実に多様です。

コロナ禍においては、会食形式の開催が難しくなりましたが、それでも日頃からのつながりを生かし、お弁当や食材配布などの活動に切り替え、子ども・子育て世帯、地域の人たちとつながり、多くの団体が状況に応じて可能な活動を続けてきました。

——どういった人や団体がこども食堂を運営していることが多いのでしょう?

三島 運営主体もさまざまですが、任意団体、NPO法人、個人の順に多いです。また、ボランティアでの運営が多数を占めています。

——運営のためのリソースが限られているボランティアでの運営が中心だからこそ、市民活動と行政・企業・市民をつなぐ中間支援組織の役割はとても大きいのではないかと思います。全国こども食堂支援センター・むすびえの活動について教えていただけますか。

三島 全国こども食堂支援センター・むすびえは2018年に立ち上がり、こども食堂の普及・啓発、活動継続の応援、運営のサポートなどに取り組んできました。現在は、「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる。」というビジョンの実現に向けて、「地域ネットワーク支援事業」、「企業・団体との協働事業」、「調査・研究事業」の3つを軸に活動しています。

地域ネットワーク支援事業では、それぞれの地域でこども食堂の支援をおこなっている地域ネットワーク団体をパートナーとして、 各地の現状や課題について学び、企業や個人のみなさまからの資金・物資(お米、お菓子、果物、その他食材、おもちゃ、本など)の寄付を仲介しています。

企業・団体との協働事業では、資金や物資の提供のほか、こども食堂を利用する子どもたちや運営者、支援者のみなさん向けに体験プログラムの開発や提供を協働して実施しています。

調査・研究事業では、こども食堂の地域インフラ化を目指す取り組みの一環として、全国の地域ネットワーク団体などのご協力のもと、こども食堂の全国箇所数調査や実態調査、現状&困りごとアンケート、認知調査などを企画・運営しています。

画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

こども食堂と物価上昇

——こども食堂の現状として、どんな困りごとを抱えている団体が多いでしょうか?こども食堂への支援活動や調査の結果からみえる最近の傾向があれば教えてください。

三島 近年の課題というと、やはり物価高騰がこども食堂の活動にも大きな負担になっています。こども食堂では、1回で20〜30人、多いところでは数百人分のごはんをつくります。そうなると食材費や活動にかかる経費がずっしり重くのしかかってきます。特にお米の値段が高くなっているのは、こども食堂の活動にとって大きな負担になっています。

こども食堂は、本来、ないならないなりにやりくりして、協力し合ったり工夫したりしながら、みんなでごはんを食べるということをやってきました。ただ、これだけ物価上昇が続くと、みなさん本当にやりくりに苦労されていると日々感じています。

——お米をはじめとした物価上昇に対して、どんな取り組みをされてきたか教えていただけますか。

小山 物価上昇対策だけを目的にしたわけではありませんが、さまざまな企業や団体のご協力で、資金や物資を全国のこども食堂に届ける取り組みをしてきました。なかでも規模が大きいところでは、お米の卸売会社・木徳神糧株式会社さんのご協力で、今年(2025年)の夏休み前に、全国約4000ヵ所のこども食堂に50kgずつ、合計約200トンのお米を届けました。

夏休みなどの長期休み期間は、学校の給食がないため子どもたちへの食の支援ニーズが高まるタイミングでもありますし、なによりお米というのがキャッチーだったようで。募集をかけたところ全国のこども食堂から、私たちにとっても過去最大規模の4200件ほどのお申し込みがありました。

農林水産省もこども食堂などに対して政府備蓄米の交付をおこなっていて、それに助けられているという声もたくさんありますが、一方で規模の小さい団体などでは手続きの手間や納品までのリードタイムを考えて申請に踏み出せないところもたくさんあります。他方、申込みが簡易で、お届けまでのリードタイムも短い私たちの取り組みは、そのようなこども食堂の現場の期待にとてもマッチしたものだったのではないかと感じます。

“こども食堂を応援したい”ニーズを支援につなげる

——さまざまな企業・団体と連携してこども食堂に支援を届けられていますが、連携する際に大事にされていることはありますか?

小山 木徳神糧さんには、2022年よりこども食堂の活動をお米の寄付で応援いただいているのですが、昨年秋にお米が市場で不足したときに、お米がこども食堂にとってクリティカルな問題だと理解いただき緊急支援を決定いただいたことが、今夏の4000カ所分のお米の寄付にもつながっています。

私たちからは、いただいた支援がどのように役立っているかを企業の方々にお伝えするようにしていて。支援を受け取った団体のみなさんが、実際にどのような困りごとがあって、今回の支援をどのように活用したかといった内容について、写真やコメントを入力できるフォームを用意しています。今回の4000ヵ所へのお米の支援でも、こども食堂からの報告が2000件以上集まりましたが、すべてお渡しして見ていただけるようにしています。

——支援がどのように役立っているかという実感を持てるかどうかは、支援を継続するモチベーションにも関わりそうですね。こども食堂と企業・団体をつなぐなかで感じることや、連携先から実際によく聞かれる声があれば教えてください。

三島 こども食堂は年々増えていて、それと同時に関心をもってくださる方も少しずつ広がっています。個人の方でも企業・団体の方でも、こども食堂のために何かしたいと思ったときに、全国レベルでネットワークや情報をもっている私たちのような存在が受け皿となることで、こども食堂にアクセスしてもらいやすくなっていると思います。

全国のこども食堂を応援したいというニーズに対して、私たちはそれを具体的な支援として届けるネットワークやノウハウをもっていますし、支援活動や調査を通じて得られたこども食堂の現状をお伝えすることで、より現場のニーズにあった取り組みを検討してもらうこともできます。

小山 協働先の方からは、ワンストップで全国のこども食堂を支援できるのが助かるという声をいただきます。多くのこども食堂は、30〜50人の規模で月に1回もしくは2回の頻度で開催しているので、それぞれの運営団体にコンタクトを取るのはすごく負荷がかかります。私たちは47都道府県の地域ネットワーク団体さんといろいろなかたちでつながっていますし、一度に数千ヵ所以上の団体さんへ一斉に情報を流すことができます。そして、欲しいと手を挙げてくださった団体さんの情報をとりまとめるシステムも構築しています。

三島 企業が個々のこども食堂と直接やりとりすることが、企業側・こども食堂側の双方にとって大きな負担になるという面もあります。言葉づかいも含めて前提となるものが違うことからハレーションが起こりやすいので、私たちが両者の間に入らせてもらうことによって円滑に支援を進めていくという役割も担っていると考えています。

後編につづく)

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